本のあつまる ところ 04松本弦人  |  mediaseven

——フォントってツールだってことに気がついたんだよね

20年ほど前にフォント「ハーレーダビッドソン」をデザインしたとき、「自分がつくったフォントでテキストを打つとそれが目の前に現れること」に驚いたそうです。誰もがつかえるフォントという「ツールないしは環境」をデザインする興奮は、それを共有可能なものにするためのフロッピーがついたペーパーマガジン『ape』の刊行につながります。
誰かがものをつくるツールや環境をデザインする「ツールジャムや環境ジャム」は、グラフィックとは異なるモードで、楽しんでいたと話されました。

『ape』(1992年)
松本さんがデザインしたフォントのほか、アニメーションやゲームなどが入ったフロッピーディスクと、フルDTPで制作されたブックレットからなるメディアです。サマタマサトさんが編集しています。

環境ジャムとともに松本さんが好んでしているのが「リエディット」です。
自分の過去の作品をデザインしなおして編集した作品集『松本弦人の仕事と周辺』をとおして、「自分のロウなデータを編集して綴じるという本のおもしろさ」に気づいたそうです。

◎『松本弦人の仕事と周辺』(1997年,六櫂社)
この作品集では、過去の作品を順序よく並べるのではなく、これまでデザインしてきた広告を作品集用にあらためてデザインしなおしてできた図案が綴じられています。つまり、作品集から伝わるのは、過去の松本弦人ではなく、いままさに仕事をしている生の松本弦人です。

——自分のロウなデータをリエディットして綴じるという本のおもしろさを感じた

◎『松本弦人の仕事と周辺』(1997年,六櫂社)
 ご購入は六櫂社サイトからどうぞ。
 http://www.rikuyosha.co.jp/intro/265.html

「フロッピーがメディアになる」ことに気づいた松本さんは、90年代半ばに、自分ひとりでやるよりもみんなでフロッピーをつかって作品をつくり販売するプロジェクトをはじめます。
その第一弾が知り合いといっしょにはじめた『マッキントッ書』展であり、第二弾が誰でも参加できるようにした『フロッケ』展でした。
これらプロジェクトとBCCK.jpのちがいは、もはや「フロッピーがメディアになっているのと、HTMLで公開されていること」だけです。

◎『マッキントッ書』展(1993年)
93年10月、原宿Digitalogueにて開催された展覧会。伊藤ガビンさんや立花ハジメさんをはじめとする21組の作家が、90mm×95mmの印刷物6枚とフロッピーディスクをつかった作品を制作し、展示・販売していました。共通するフォーマットでもって表現と流通の環境をつくりだすという意味では、たしかにBCCKS.jpに通じます。

◎『フロッケ展』(94〜00年)
94年から00年まで、原宿Digitalogueにて毎年1回開催された、『マッキントッ書』展が進化した展覧会。『マッキントッ書』展と同じくフロッピーをメディアとしてつかった作品を一般公募して展示・販売した「フロッピーのコミケ」。印刷物がプリントアウトに変わったことでより「お手軽」なかたちへとメディアが進化しています。

○フロッケ メモリアル館
http://www.salu-pro.com/FLOKKE/fj.html

——自分ひとりでやっているより、みんなでやんないって言ってやった

マルチメディア関連の仕事を経た2002年につくったテレビゲーム『動物番長』。「自分のやりたかったことの1割しかできなかった」というその仕事で、思いどおりにならないもどかしさはあれども、「自分のないなかにない新しさやおもしろさ」をほかのスタッフがもたらすことの楽しさに気づいたそうです。

——チームでやるもどかしさと、チームだからこそ自分にない新しさやおもしろさ

自分のロウな経験を誰でも編集できるような環境をつくることと、その環境から他人が生み出すもののおもしろさーそんなBCCKS.jpへの道具立てがそろってきたところで、ウェブサイトの問題に話が移りました。
読まれるメディアとしてのデザインがなされてないこと、検索性能の低さ、そして何より書き手の「人となり」が現れにくいこと…。ウェブの仕事とBEAMSの30周年カタログを同時にすすめながら、これら問題を考えるなかで、これまでの仕事や好きなことがまとまってきて、BCCKS.jpに行き着いたそうです。

人をもてなすことを楽しむのと同じように、誰かがモノをつくったり、楽しんだりする環境を準備する楽しさがあるーそこには「なんか似ているけど違うようにも思っていて、でも似ているところ」もあって、最初のころからあまり変わってないのかもしれません。

——ものをつくる楽しさともてなす楽しさ、共有する楽しさ

 

   
   
   
当日、参加いただいた方から
お寄せいただいた感想です。

本のあつまる
ところ
04松本弦人