Rabbit with melting soft ice cream  |  mimiko

 
 

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10分後。白い泡であるはずのそれは、歯みがき粉と唾液と血液が混ざりあったせいでピンク色に染まっていて、果肉の中に沈んでいく感覚を覚えるほど柔らかく熟した桃の色の様だったし、つい1週間前に読んだ小説に書いてあった、砂糖菓子でできたピンク色の雲はそれに近いような気がしたので、同意を求めようか迷っていると、彼女は、この歯ブラシのせいよ、固いのは血がでるからだめって前も言ったでしょ、思い切りみがきたいのよ、あーもういい、それだけ、と口唇の上に少し泡を残したままわたしを責めるように言って、鈍色に光る蛇口を強くひねった。ピンク色のそれがあっという間に排水溝の細い管に吸い込まれていくのは、少しもったいないような気がした。

その歯ブラシは、鎮痛剤を買いに立ち寄ったドラッグストアで、たまたま安売りになっていたので何も考えずに買い物かごに放り込んだものだった。彼女の歯ブラシについての嗜好は聞いた覚えがなかった。いつもの夢を見た朝、彼女は機嫌が悪い。

走るウサギと溶けないソフトクリーム について思考をめぐらせながら、わたしは、ぼんやりと白く発光する窓の外を眺める。

 
 
 
 

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