ガラスの 屋根の家  |  matsuzaki

 
 

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ガラスの屋根の家

 
 
 

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 この家の特徴を一言で表現しようとするならば、やはりガラスの屋根、というところだろうか。ガラスの屋根の技術を支えているのが、またガラスの床をつくる技術でもある。これがないと住宅の採光や断熱や構造が成立しない。
 3尺の井桁状に組まれた梁の上に6ミリ厚のクロロプレンゴムを接着し、その上に、UVカットフィルムを貼った強化ガラスを置き、クリアのシールで固定する。天窓の下面(2階の天井)もこれと同じ仕様である。
 壁との取り合いにはボード2枚分の厚みだけガラスを差し込んであるので、自重と併せて浮き上がりには十分な抑えになるだろうと考え、押縁をなくしている。清掃の手間や躓きを防ぐためにもフラットがいいだろう。
 天気のいい日には床に青空が映り、まるで流れる雲の上に立っているような気分である。吹抜けにするかどうか迷ったけれど、ガラスの床を選択して正解だった。

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49 Glass Roof House

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 人はおそらく一生に一度、家をつくるという大事業に直面し、その難しさ、物足りなさ、楽しさ、満足、などをいろいろと味わうことになるだろう。建て売り住宅を買うのも含めて、家づくりは大変な大事業だと思う。
 人生は楽しみや幸せを味わうためにある、と信じているので、人様の家づくりを仕事としながらも、そこに自分の楽しみと幸せを味わせてもらうことを一番の目的としている。そのためにはつくり手が心の底から満足することが必要だと考えている。建築主のお金を使って好きなことをしているような建築家と同じではないか、と言われそうだが、自分が好きなことをしたいという気持ちはまったくない。自己主張の表現は皆無なので、世間一般で言うところの「建築」としての価値はあまりない。依頼主の満足こそが楽しみと幸せになるのだ。
 つまらないものにムダな出費をしてもらいたくないが、夢は全部かなえたい。メーカーや企業が利益目的で販売している住宅ともまるで別物なのである。

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50 家を建てるということ

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 地の底に落ちたところから、もう一度這い上がろうという日本の住宅建築の未来は、前途多難だが、無限の可能性が広がっているとも言える。
 もちろんちゃんとした見識を持つ建築家も大勢いる。依頼する側も自分の好きなように家をつくればいいのであるから、いい建築家と出会って、それぞれが楽しい我家をつくってくれるようになれば、それで十分なのである。それに応えられる技術者にならなければならない。
 なんとか人と違うつくりかたがないかと変わった材料と常識外の納まりで家らしきものをつくることに興味はないので、ただ真面目に家づくりの技術を追求したい。
 どんなに頑張っても一年に一戸建てるのがやっとである。年間に数十万戸の住宅が建てられている現実から考えると、自分の試みなど無に等しいと思える。それでも限られたチャンスを無駄にはできないので、一戸一戸丁寧につくっていきたいと思う。                  (松崎 宏二)

 
 

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おわりに

 

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 どうやって家を設計したらいいのか分かっている人はそんなに多くはない。いや、ほとんどの人にとっては謎に包まれた世界かもしれない。どうしてこれほどつまらない住宅しかないのかも疑問だろう。
 億ションとか大豪邸とか言っても出来合いの建材で組み立てられたバラックみたいなものである。建築家もまともにいい家をつくろうとはせず、自己顕示欲を満たす道具だと考えている者が大勢いる。肝心な知識もなく、ひたすら詩的で観念的な空間づくりに励んでいる。
 日本の住宅建築には、伝統や文化や生活に根ざした標準工法がもはや存在していない。地価の高さゆえに上屋にかけるコストは相対的に下落する一方だ。減価消却していずれ無価値になる耐久消費財にすぎないのである。
 住宅産業界の儲けの構造の中で、家の品質はお粗末になっていくばかりである。絶望的である。伝統工法を復活させようにも、もう大工も職人も、材料すらもない。

 
 
 

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ガラスの屋根の家

 

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ガラスの屋根の家

 
 

<撮影>宮本 啓介<建築>小田原 稔彦
<施主>野田 ルミ子<設計>松崎 宏二

 

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ガラスの
屋根の家
Glass Roof
House
作成日:2010 年 10 月 03 日

  • 著者:松崎 宏二
発行:松崎 宏二

©matsuzaki 2010 Printed in Japan

bb_B_0035278 第9版

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